不妊症の原因

排卵に原因のある不妊症

排卵は妊娠を希望する女性には不可欠なことです。
この排卵がうまく起こなわれないと不妊の原因になります。
生理が始まると、卵巣内では次の妊娠するため卵胞が育ち、十分に卵胞が成長すると、卵胞内に卵子が成熟して、卵子が外に飛び出します。これが排卵です。

卵胞内に卵子が外に飛び出せずに残ってしまったり、卵子自体が成長できなかったりすると、排卵は起こりません。
このように排卵が正常に行われない状態が排卵障害で、不妊の大きな原因となっています。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

卵巣にはたくさんの卵細胞があり、毎月一つずつ成熟します。
卵子は卵胞という袋に包まれていて、発育するにつれてこの袋が大きくなっ ていき、およそ2cmくらいの大きさになると破裂して、卵胞の 中の液体とともに卵子が排卵されます。
生理が始まって、排卵するまでの間(低温期)、脳の視床下部から卵巣に成熟卵を作る役目を持ったホルモンが出ます。
しかし卵巣の働きが低下していると、ホルモンが十分に分泌されません。
卵巣の表皮が厚く硬くなってしまうこともあります。

すると、卵胞の中で卵子が成熟できなかったり、卵巣の皮を破れないため、排卵せずに卵巣の中に溜まってしまった状態を多嚢胞性卵巣症候群といいます。

卵巣内を超音波でチックすると、排卵できなかった小さな卵胞がたくさん並んで残っているのを確認できます。
この様子は「卵胞が真珠のネックレスのように連なって見えることから、通称「ネックレスサイン」とも言われています。

多嚢胞性卵巣症候群は、生理不順、無月経、不正出血などの症状を伴い、不妊の原因の中でも多くを占めます。

多嚢胞性卵巣症候群の原因

・内分泌異常
脳下垂体から卵胞ホルモンと黄体ホルモンが出て、卵胞を成熟するように働きかけますが、多嚢胞性卵巣症候群の場合、黄体ホルモンが多く分泌され、卵胞ホルモンとのバランスが乱れることで、卵胞が十分に成熟できない状態になります。
卵胞が十分に成熟できないと、排卵も起こらず、卵巣の中に残るようになります。

・ストレス
仕事やプライベートの精神的なストレスがあると、脳下垂体や視床下部の働きが低下し、ホルモン分泌のバランスを乱します。
また、食生活や日常生活の不規則、卵巣の冷え、血液量が少ないことが原因でホルモン分泌のバランスが乱れることもあります。

多嚢胞性卵巣症候群の治療

・西洋医学
有効な治療方法がありません。

・東洋医学(漢方の知恵)
卵巣の血液循環不良や水分バランスの乱れが原因で卵巣膜が硬くなったと考えて治療します。
卵巣が知らず知らずのうちに冷え、その機能がうまく働かないため、卵巣膜が硬くなります。
しかし、卵巣の血液循環を良くすることで、ホルモン分泌が整います。
ホルモン分泌が整うと、質のいい卵子を作り、卵子が成熟し、子宮内膜も厚く、赤ちゃんを育てるための子宮環境が整うのです。

高プロラクチン血症(PRL)

プロラクチンとは、脳の下垂体というところから出るホルモンの一種です。
このプロラクンは、本来妊娠や出産後に多く分泌され、母乳を出 す役割があります。
いろいろな原因で、このプロラクチンが多く分泌されてしまうのが「高プロラクチン血症」です。
プロラクチンが多く分泌されてしまうと、妊娠していなくても、身体は妊娠したと勘違いして、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を抑制してしまいます。
そのため、卵巣内で卵胞を作らなくなり排卵が起こらないのです。

原因として、プロラクチン放出の関与している「ドーパミン」が正常に作用していなかったり、甲状腺機能の低下や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、また薬剤(胃潰瘍・向神経性薬剤・精神安定剤、抗ヒスタミン)などの副作用が考えられます。

高プロラクチン血症は、精神的なストレスや疲れなども影響するので、値はかなり変動しやすく、1回の検査で断定するのは難しいです。
プロラクチン値は、15ng/ml以下が正常とされていますが、100ng/ml以上の高値を示す場合は、脳下垂体に腫瘍が存在することもあるので、場合によっては、CTスキャンやMRIなどの画像診断していくことが大事です。

また、昼間のうちにプロラクチンの数値が正常なのに、夜間になると上昇することがあります。
これを潜在性高プロラクチンと呼び、隠れた不妊の原因となっています。
真面目な性格の女性で、いつも気にしている事が頭から離れないタイプの人、睡眠中によく夢を見る人や歯ぎしりをかむ人、寝言をよく言う人にその傾向があります。

黄体化未破裂卵胞症候群(LUF)

卵巣は卵胞を成熟させ、中で卵子が育っていきます。
そして、その卵胞が順調に成熟すると、卵胞の中から卵子が外に飛び出し、排卵が起こります。
その時に卵子がうまく外に飛び出すことができず、卵胞の中に卵子が残ったままの無排卵の状態で、黄体化ホルモン(LH)が分泌されてしまう症状を黄体化未破裂卵胞と言います。

卵巣に残った卵胞が黄体に変化すると、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるので、基礎体温もきれいな二層性になります。
しかし、実際には肝心な卵子が排卵されていないので妊娠することはできません。

排卵のきっかけになる黄体化(プロゲステロンホルモン)は下垂体から分泌されますが、この下垂体は、脳の中でも特にストレスに影響を受けやすい場所から分泌されるために、ストレスに影響されにくい精神や身体を作ること大切です。

卵巣性無排卵症

女性の卵巣には、赤ちゃんの元となる原始細胞がたくさんあります。思春期になると、ホルモンの命令により成熟した卵子が、毎月左右の卵巣のどちらかから排卵します。
この原始細胞が極端に少なくなり、排卵が起こりにくい状態を卵巣性無排卵といいます。

卵巣も加齢と共に老化し、卵巣機能が低下することは避けられないことです。
卵巣の老化は、加齢の他に食生活、日常生活・ストレス・冷えなども原因となっています。

しかし多くの血液を卵巣へ送り、たんぱく質・鉄分などの栄養をしっかり摂り、質のいい睡眠をとる生活を続けることで、卵巣の働きは活発になることは可能です。

無排卵性月経(無月経)

無排卵性月経(無月経)は、生理は起こるのに排卵していない状態です。
基礎体温表では、高温期と低温期の差がなく、一相性の状態が続き、生理の周期も不安定で、長かったり短かったりします。

不正出血も起こりやすく、生理がすぐに終わったり、またいつまでもダラダラ続くなどの異常が起こりやすいのが特徴です。
原因は、卵巣機能が低下していて、低温期にしっかりと卵巣内で、卵胞が成熟することができない状態ということが考えられます。

甲状腺機能異常(PRL)

甲状腺の病気は、女性には比較的多く見られる症状です。
甲状腺の機能が進しても、低下しても、妊娠をしたい女性には辛い症状です。
特に甲状腺機能低下症は、排卵が起きにくくなったり、黄体の機能が低下することで、不妊症や不育症の原因になることがあります。
甲状腺機能低下の原因は、甲状腺自体に原因があり、甲状腺ホルモンは、卵胞の成長に影響するので、甲状腺ホルモンが足りなくなると、卵胞の成長ができず、排卵が起きづらくなります。

仮に排卵が起きても、卵胞の成長が充分でないため受精卵を成長させるための黄体ホルモンの分泌が少ないく、なかなか着床できにくいです。

甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、脳から「甲状腺を出せ」という命令がたくさん出て、甲状腺を刺激します。
すると、TRHというホルモンがプロラクチン(乳汁ホルモン)を増やします。
プロラクチンもまた、卵胞の成長を妨げ、エストロゲンの分泌が低下させます。

卵胞の出来が悪いため、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が低下するので、排卵障害が起こりやすく、生理が乱れたり不育症の原因となります。

間脳・脳下垂体排卵障害

女性の身体は、脳や卵巣子宮それぞれから分泌されるホルモン物質がとても密接な仕組みで作用しあい、卵巣で健康で成熟した卵子を作り、排卵するようになっています。
ホルモンの分泌をコントロールしているのが間脳や下垂体の役割です。
間脳や下垂体のホルモン分泌作用にトラブルがあると、排卵障害を引き起こします。

脳下垂体排卵障害
脳下垂体は、FSHやLHの分泌するだけでなく、甲状腺ホルモン・成長ホルモン・プロラクチン・副腎皮質ホルモン・抗利尿ホルモンなどの分泌を調整いている重要なホルモンのコントロールセンターです。

そのため、脳下垂体に異常が起こってくると、甲状腺ホルモン・成長ホルモンなどの分泌は減りますが、FSHやLHだけは分泌が多くなってしまい、卵胞や卵子が育たなくなったり、排卵が起こらなくなったりする傾向があり、不妊の大きな原因の一つです。

間脳排卵障害
間脳に異常が起こると、性腺刺激ホルモン(FSHやLH)の分泌が正常に行われなくなることで、無排卵になるケースが多く見られます。

間脳のトラブルで無排卵になっても、生理は起こることが良くありますので、基礎体温の記録を記帳していない場合は、なかなかその異常に気付くことができない場合があります。状態が改善されず、生理が止まり無月経になってはじめて、その症状に気づく方も多くおられます。

こういった状態の場合は、間脳に異常にがある場合が多く、血液検査で黄体ホルモンの検査をすることでわかります。

視床下部性排卵障害

排卵をコントロールしている脳内の視床下部に異常が起こり、卵子の排卵が正常に行われないケースは、不妊の原因でとても多い排卵障害の症状です。

排卵や卵胞の成長や子宮頸管粘液の分泌に作用するLHやFSHは、間脳の視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)によってコントロールされています。
睡眠不足・ストレス・自立神経の乱れ・栄養の摂りすぎ・ダイエットなどが原因で、視床下部自体に異常が起こり、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が正しく分泌されず、黄体化ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)にも影響が起こり、排卵障害を起こします。

着床に原因のある不妊症

排卵された卵子と射精された精子が合体することを受精といいます。
また受精した後、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管を移動し、子宮の内膜に着くことが着床です。この着床がうまくいかないことを着床障害といいます。

着床障害の原因

子宮内膜の厚さや状態が悪いことが考えられます。
子宮内膜は、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用によって、厚くなり、いろいろな栄養物を蓄え、受精した卵子を受け入れて発育させやすい状態になります。

黄体ホルモンの分泌が充分でないと、子宮内膜も十分な厚さにならず、7~8mm以上ないと着床できにくい可能性があります。

子宮内膜は排卵前から変化を続けて、高温期の中頃には、着床期内膜という着床に適した状態になりますが、受精卵が着床する時期に、子宮内膜の発育が遅れてしまうと着床できません。
この原因は、低温期の卵胞の成長が不十分のための黄体ホルモンの分泌不足が考えられます。

着床障害の治療

低温期に卵胞の発育が悪かったため、卵胞ホルモンや黄体ホルモンをうまく分泌できなかったことが原因となります。

低温期に、卵胞と卵子をしっかり育てる食生活や日常生活をして、充分に成熟した卵胞・卵子を育てると、排卵後には卵胞から黄体ホルモンをたくさん分泌します。
すると子宮内膜は厚く、栄養に富んだ状態になることができ、着床がしやすい状態になります。

着床障害の方は、ホルモンバランスが乱れないようにすることが何よりも大切です。
具体的には、卵巣や子宮を冷やさないようにすることが最重要です。

食生活では、身体を冷やす生野菜・果物・豆乳・牛乳・青汁・野菜ジュースなどは避けること。
夜は早く睡眠し、精神的なストレスも軽減できるようにしましょう。

子宮筋腫

良性の瘤ができる症状で、他の場所への移転はみられません。女性ホルモンの過剰分泌が原因といわれていますが、その原因は、はっきりわかっていません。
閉経すれば、自然に小さくなっていく傾向があります。

自覚症状のない人が多く、その場合は治療の必要はありませんが、生理血の量が多い人、血の塊が出る人、生理周期が長くなったなどの症状が現れてきたら、事前に検査しておいたほうがいいでしょう。
妊娠が希望で、自覚症状がなく、日常生活に支障がなければ、経過観察で、様子を見ていく程度も可能です。
しかし、次のような症状がある人は、辛いのを我慢せず、早めに婦人科にかかりましょう。

  • 1時間に1度くらい生理用ナプキンを替えないと心配
  • 外出できないほど、生理の量が多い
  • レバーのような血の塊がしばしば出る
  • 経血量が多く、貧血気味
  • 生理がダラダラと10日以上続く

子宮筋腫ができやすい場所

できる場所や自覚症状によって対処の仕方が違います。
自分はどのタイプかを知ることが安心への第一歩です。

・筋層内筋腫
子宮の筋層内にできるタイプで、いい最内は症状はほとんどありませんが、大きくなって子宮内部が変形すると、生理の量が増えたり、下腹部痛や腰痛の原因になります。
また、受精卵の着床が妨げられ、着床障害の原因になる場合があります。

・漿膜下筋腫
子宮の外側を覆っている漿膜の下にできて、外側に突き出るように瘤ができます。
大きくなっても自覚症状がないことが多いようです。
ただし、できた場所によっては、その周辺の臓器を圧迫し、便秘や頻尿、腰痛の原因になる場合もあります。

・粘膜下筋腫
子宮内膜の粘膜下にできるもので、筋腫の発育につれて、子宮内膜の面積が大きくなり、不正出血や生理血過多の原因になります。
このタイプは、筋腫が2cm程度の小さなものでも、過多月経が起こり、貧血になりやすいので、注意が必要です。

よくある質問子宮筋腫があると、妊娠できないの?

子宮筋腫は不妊の原因になることもあります。また、場合によっては、流産を起こしやすくなります。
妊娠への影響は、筋腫の大きさと出来ている場所によって変わってきますが、大きさが3~5cmくらいまでなら問題がないとされています。

妊娠中に子宮筋腫がわかった場合、筋腫が子宮口や産道外なら、普通分娩は可能です。

黄体機能不全

生理が始まってから排卵するまでの間に、20mmほどの卵胞の中に成熟した卵子が育ち、受精卵が着床でき、高温期が長く続けば、妊娠が期待できます。
受精卵が着床しなければ、生理がおこり、次に周期に向かって、リセットします。女性の身体は、妊娠できるように女性ホルモンにより、コントロールされています。

成熟した卵子が排卵された後に、卵巣に残された卵胞が黄体化に変化し、黄体ホルモンを分泌するようになります。黄体ホルモンは、子宮内膜の状態を柔らかく厚くし、受精卵が着床しやすいフカフカベッド状態にしてくれる作用があります。
黄体ホルモンの分泌が少ないと、子宮内膜が薄かったり、高温期が短かったり、低温期と高温期の温度差がなくなったりします。この症状を黄体機能不全といいます。

具体的には

  • 高温期の持続が9日以内
  • 低温期と高温期の温度差が0.3度以内
  • 子宮内膜の熱さが8mm以内
  • 寒い地域で採れるもの
  • 黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が10ng/ml未満

黄体機能不全の原因

具体的には

  • 卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌低下
  • 黄体化ホルモン(LH)の分泌低下
  • 子宮内膜の感受性の低下

黄体機能不全の原因は、低温期の卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌不足により、卵胞の発育不全が考えられます。
また、排卵期の黄体化ホルモン(LH)の分泌が少ないため、子宮内膜と黄体ホルモンの感受性が悪くなることが考えられます。

また子宮内膜と黄体ホルモンの感受性が悪いということは、受精卵が着床する時に、子宮内膜が薄く、フカフカベッドような厚く柔らかいくない状態が考えられます。

黄体機能不全の治療

生理が始まって排卵までの間は、卵胞や卵子が育つ大切な時期です。
この時期に卵巣へ多くの血液を送り、卵巣の働きをアップさせることが理想的な方法です。

卵巣の働きをアップさせることで、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を多くし、大きな卵胞を作り、卵子を成長させていくことができるからです。
食生活・日常生活面では、食事では多くのタンパク質や鉄分を摂り、ホルモンが分泌するといわれる夜間のできるだけ早い時間に就寝することが重要です。

その他の黄体機能不全

その他のいくつかのホルモン分泌異常で、黄体機能不全が起こることがあります。

  • 高プロラクチン血症
  • 高アンドロゲン血症
  • 甲状腺機能低下

子宮内膜症

子宮の内側を被っているはずの子宮内膜が、なぜか別の場所に発生してしまう症状です。
卵巣や卵管・腸などの場所に発生し、その場所でも本来の子宮内膜と同じように、生理の度に子宮内膜の増殖や出血を繰り返し行います。

ところが、本来の子宮へつながる膣のような出口がないため、生理血がその場所に溜まり、炎症を起こしてしまう症状になります。

生理痛は、ほとんど気にならない軽い人から、毎月寝込むほどひどい人まで、個人差が大きいものです。
少しくらいの生理痛はあっても、日常生活に大きな影響が出るほどつらい場合は、子宮内膜症の可能性があります。

子宮内膜症の症状

  • 生理中がひどく寝込んでしまう
  • 生理以外にも下腹部痛がよくある
  • 排便の時に肛門の奥が痛い
  • 排卵の頃、下腹部が痛い
  • セックスの時、膣の奥が痛む

子宮内膜症のできやすい場所

卵巣、ダグラス窩、腹膜の3か所に比較的よくできます。また、これらの複数の場所に同時にできることも多くあります。

・チョコレート嚢胞
卵巣に血液が溜まって、卵巣が腫れます。チョコレート嚢胞の大きさが7~8mm以上になると嚢胞の表面が破れて内用液が流れだし、激痛が起き、緊急手術が必要になる場合があります。
また、卵管の周囲に癒着が起こると、排卵の妨げになり、妊娠への影響が考えられます。まれに卵巣がんが発生することもあります。

・ダグラス窩深部病変
子宮と直腸の間にあるダグラス窩深部に内膜症や癒着が起きるもの。ひどい生理痛、排便痛、性交痛の原因になります。
症状は、個人差があり、この病変があってもあまり痛みを感じない人もいます。

・腹膜病変
骨盤内の臓器を被っている腹膜に、斑点や発疹のような細かい病変ができるタイプ。
子宮内膜症の中では。最も軽いもので、治療する必要のない場合も多く、妊娠すれば自然に治ってしまうこともあります。

ピックアップ障害

卵管の一番先にある卵管采は、排卵した卵子を卵管内に取り込む働きをしますが、ピックアップ障害は、卵管采が卵子を取り込むことができない症状です。
原因は、子宮内膜症や炎症によることが多く、骨盤腔内の手術後によるものや、癒着、クラミジアによる感染も考えられます。

頸管に原因のある不妊症

女性の子宮は、外からの遺物や雑菌の侵入を防ぐために、通常酸性に保たれています。
しかし男性の精子は、子宮の酸性の環境内で長時間生きていることができません。
女性は、排卵期になると子宮頸管から子宮頸管粘液が分泌されます。
この子宮頸管粘液は、アルカリ性で透明でサラサラとし、10cm以上伸びる性質を持っています。

男性の精子は、子宮頸管粘液のアルカリ性の環境が一番住みやすく、タイミングをとると、子宮頸管粘液に守られながら、子宮の中を通って、卵管に泳ぎ着き、卵管で卵子と出会うと受精卵となります。

ところが、排卵期になっても、子宮頸管粘液の分泌が少なかったり、女性の身体が精子を受け入れられなかったりなど、精子が女性の子宮内に侵入できなくなくなる症状が出ることがあります。
これらの症状を頸管粘液障害といいます。

黄体機能不全

生理が始まってから排卵するまでの間に、20mmほどの卵胞の中に成熟した卵子が育ち、受精卵が着床でき、高温期が長く続けば、妊娠が期待できます。
受精卵が着床しなければ、生理がおこり、次に周期に向かって、リセットします。女性の身体は、妊娠できるように女性ホルモンにより、コントロールされています。

成熟した卵子が排卵された後に、卵巣に残された卵胞が黄体化に変化し、黄体ホルモンを分泌するようになります。黄体ホルモンは、子宮内膜の状態を柔らかく厚くし、受精卵が着床しやすいフカフカベッド状態にしてくれる作用があります。
黄体ホルモンの分泌が少ないと、子宮内膜が薄かったり、高温期が短かったり、低温期と高温期の温度差がなくなったりします。この症状を黄体機能不全といいます。

具体的には

  • 高温期の持続が9日以内
  • 低温期と高温期の温度差が0.3度以内
  • 子宮内膜の熱さが8mm以内
  • 寒い地域で採れるもの
  • 黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が10ng/ml未満

黄体機能不全の原因

具体的には

  • 卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌低下
  • 黄体化ホルモン(LH)の分泌低下
  • 子宮内膜の感受性の低下

黄体機能不全の原因は、低温期の卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌不足により、卵胞の発育不全が考えられます。
また、排卵期の黄体化ホルモン(LH)の分泌が少ないため、子宮内膜と黄体ホルモンの感受性が悪くなることが考えられます。

また子宮内膜と黄体ホルモンの感受性が悪いということは、受精卵が着床する時に、子宮内膜が薄く、フカフカベッドような厚く柔らかいくない状態が考えられます。

黄体機能不全の治療

生理が始まって排卵までの間は、卵胞や卵子が育つ大切な時期です。
この時期に卵巣へ多くの血液を送り、卵巣の働きをアップさせることが理想的な方法です。

卵巣の働きをアップさせることで、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を多くし、大きな卵胞を作り、卵子を成長させていくことができるからです。
食生活・日常生活面では、食事では多くのタンパク質や鉄分を摂り、ホルモンが分泌するといわれる夜間のできるだけ早い時間に就寝することが重要です。

その他の黄体機能不全

その他のいくつかのホルモン分泌異常で、黄体機能不全が起こることがあります。

  • 高プロラクチン血症
  • 高アンドロゲン血症
  • 甲状腺機能低下

抗精子抗体

私たちの身体には、健康を維持するために、免疫機能が働きます。外から体内に入ってきたウイルスや病原菌を外敵として攻撃する働きです。

女性の身体の免疫機能が、体内に入ってきた精子を異物と判断し、攻撃してしまうのが抗精子抗体です。
女性の免疫細胞は精子よりも強いため、精子は、女性の免疫細胞の攻撃により、運動することができなくなり、受精が困難になります。
そのため、この免疫細胞を持っている女性は、自然妊娠することが難しくなってきます。

抗精子抗体の種類

抗精子抗体には、精子不動化抗体と精子凝集抗体の2種類があります。

・精子不動化抗体
精子は、尾部を動かすことで前進することができますが、精子不動化抗体は、この尾部が動けないようにしてしまうため、精子は前進できず、身動きがとれなくなり、卵子と受精することができなくなります。

・精子凝集抗体
精子同士を結合させてしまう抗体です。
結合された精子は前進運動が出来ず、卵子を受精することができません。
また抗精子抗体は、男性にもあります。

男性の身体の中では、精子と自分自身の血液は絶対に接触しないようになっていますが、精巣・精巣上体・精管に炎症があって、精子が直接血液に接してしまうと、抗精子抗体ができてしまい、精液検査で精子の凝集反応が起こります。

精子の凝集した塊(かたまり)があっても、働いている精子がたくさんあれば、自然妊娠は可能です。

頸管粘液不全

女性のおりものは、女性ホルモンの影響を受けて、周期的に変化します。
排卵前になると、男性の精子を受け入れるために、分泌はピークを迎え、たくさんのおりものが分泌されます。

排卵時のおりものは、卵の白身のように透明、または白濁したクリーム色をしており、手の指で伸ばすと10cm以上に伸び、精子が活発に活動できるような環境に保ってくれます。

女性の子宮は、雑菌の多い肛門の近くにあり、また絶えず外陰部や月経・卵管などにつながっているため、外からの雑菌が侵入しやすい場所です。
そこで、子宮内はデーデルライン桿菌と呼ばれる善玉菌が常に働き、雑菌を増殖させないように酸性に保たれているます。

男子の精子は、デーデルライン桿菌の作る酸性に弱いですが、子宮頸管粘液のアルカリ性を好む性質があります。
排卵前後、女性の子宮頸管粘液が増えた時にタイミングをとると、精子は子宮頸管粘液の助けにより、運動率が増し、子宮腔まで泳いでいきやすくなり、受精能力が高まります。

低温期にしっかりと卵巣で卵胞が成長し、多くのエストロゲンが分泌され、グレードの高い卵子が成熟すると、多くの子宮頸管粘液が分泌されます。
卵巣の機能が低下し、充分な卵胞や卵子ができないと、ホルモンの分泌不足を起こします。
これらの理由で、子宮頸管粘液の分泌に不足や障害があることを頸管粘液不全と呼び、不妊原因の1つになります。

一口メモ子宮頸管粘液が正常に分泌されない原因

  • 低温期に卵胞が充分に成長できなかった場合
  • 子宮内に細菌(クラミジアや淋菌)などの病原菌が侵入し、炎症を起こしている場合
  • クロミッド(クロミフェン)やセキソビットなどの排卵誘発剤の副作用

子宮頸管無力症

子宮頸管は、非常に弾力性があり、妊娠した場合は、子宮内部から胎児が外に出ないように締まっています。
ところが、子宮頸管の弾力がない子宮頸管無力症は子宮頸管が締まりにくくなり、妊娠中期の5~7か月ごろ、胎児が大きく成長することで、支えきれなくなり、早産の危険性がある症状をいいます。
頸管無力症と診断された場合は、頸管をしばる手術をすることで胎児を守り、37週まで保つことで、自然妊娠することができます。

子宮頸管炎

子宮頸管に炎症があると、精子はうまく子宮の内側を卵管へ向かって、昇っていけなくなります。
子宮頸管の炎症の原因は、細菌から起こることもありますが、最近もっとも問題になっているのは、クラミジアという特殊な細菌によるもので、クラミジアによる子宮頸管炎は、症状がほとんど出ないのが特徴で、男子の尿道にも感染し、尿道炎を引き起こします。

クラミジアは病気に気が付かない間に子宮頸管から卵管炎、骨盤腹膜炎を起こしてしまうことがあるので、不妊症の方は一度検査を受けたほうがよいでしょう。

卵管に原因のある不妊症

卵管は、子宮の上部にあり、卵巣に向けて左右に伸びている10~15cmの細い管です。
卵管は、ラッパ管とも言われ、先に行くと手を広げたような形をしている卵管采があり、卵胞から飛び出した卵子を受け止めやすくなっています。

卵管の役目は、卵胞から排出された卵子を子宮まで運ぶことです。
卵子は卵管の線毛運動や蠕動運動によって、子宮の奥へと運ばれていきます。
卵子が途中の卵管膨大部で精子と出会えば受精卵となります。
受精卵が子宮へ運ばれて、子宮内膜に着床すると、妊娠が成立することになります。

卵管は受精卵の通り道となる大切な場所ですが、非常に細いため、ちょっとした炎症や分泌物の影響で、狭くなったり、詰まりやすくなったりします。
卵管が左右に1本ずつ計2本あり、どちらか1本だけでも通っていれば、妊娠は可能です。
しかし、妊娠しやすい状態を作るには、詰まっている方の卵管を治療する場合もあります。

卵管が狭い、もしくは詰まってる場合などは、卵管の通り具合を調べる卵管造影検査を行います。
この検査で、卵管の詰りが確認できれば、通水検査や通気検査で、卵管内部の圧力を調べ、卵管内部を広げたりします。
卵管が詰まったり、狭くなったりしている場合、手術によって卵管を開通させ、妊娠できるようにします。

子宮内膜症

子宮の内側を被っているはずの子宮内膜が、なぜか別の場所に発生してしまう症状です。
卵巣や卵管・腸などの場所に発生し、その場所でも本来の子宮内膜と同じように、生理の度に子宮内膜の増殖や出血を繰り返し行います。

ところが、本来の子宮へつながる膣のような出口がないため、生理血がその場所に溜まり、炎症を起こしてしまう症状になります。

生理痛は、ほとんど気にならない軽い人から、毎月寝込むほどひどい人まで、個人差が大きいものです。
少しくらいの生理痛はあっても、日常生活に大きな影響が出るほどつらい場合は、子宮内膜症の可能性があります。

子宮内膜症の症状

  • 生理中がひどく寝込んでしまう
  • 生理以外にも下腹部痛がよくある
  • 排便の時に肛門の奥が痛い
  • 排卵の頃、下腹部が痛い
  • セックスの時、膣の奥が痛む

子宮内膜症のできやすい場所

卵巣、ダグラス窩、腹膜の3か所に比較的よくできます。また、これらの複数の場所に同時にできることも多くあります。

・チョコレート嚢胞
卵巣に血液が溜まって、卵巣が腫れます。チョコレート嚢胞の大きさが7~8mm以上になると嚢胞の表面が破れて内用液が流れだし、激痛が起き、緊急手術が必要になる場合があります。
また、卵管の周囲に癒着が起こると、排卵の妨げになり、妊娠への影響が考えられます。まれに卵巣がんが発生することもあります。

・ダグラス窩深部病変
子宮と直腸の間にあるダグラス窩深部に内膜症や癒着が起きるもの。ひどい生理痛、排便痛、性交痛の原因になります。
症状は、個人差があり、この病変があってもあまり痛みを感じない人もいます。

・腹膜病変
骨盤内の臓器を被っている腹膜に、斑点や発疹のような細かい病変ができるタイプ。
子宮内膜症の中では。最も軽いもので、治療する必要のない場合も多く、妊娠すれば自然に治ってしまうこともあります。

漢方治療法

子宮の病気の多くは、血液の滞りと冷えが原因です。
子宮内の毛細血管の血の流れを良くし、血液の逆流を防ぎ、血の道をきれいにすることがたいへん重要です。

このように、子宮内膜症が進行すると、卵巣嚢腫や卵管癒着による狭窄、子宮腺筋症による着床障害など 不妊症の原因に、内膜症が関係することが多くあります。
子宮内膜症の痛みを安易に鎮痛剤で抑えることは、根本的な治療を妨げ、かえって本格的な病気を招くことになります。
強い鎮痛剤の使用は控え、身体を暖めることと、活性酸素を除去することが大切です。

一口メモ子宮の冷えを改善する漢方の知恵

当店では子宮内の血液の滞り(お血)を改善、血液循環を良くし、子宮の冷えを改善する方法をお勧めし、根本的な体質改善にたいへん効果的です。

クラミジア感染症

眼病のトラコーマを起こすクラジミアトラコーマティスという細菌が原因で、セックスが感染するもので、最近の若い男女に増加しています。
クラミジアは、自覚症状が少なく、治療せずに、放置しておくと、炎症は身体の奥へ進行し、子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎などを起こします。

具体的な症状

  • タイミング時に痛みを感じる
  • 下腹部に違和感を感じる
  • 生理血でない、出血がある

子宮や卵管に炎症を起こし、卵管が詰まってしまうようになると、精子と卵子が出会うことができず、受精や着床の妨げとなります。
また、受精卵が卵管以外の子宮以外の場所で成長してしまうと、子宮外妊娠につながることもあります。

妊娠中にクラミジアの症状が出ると、流産や早産のリスクが上がり、症状があらわれたまま出産すると、赤ちゃんに感染して、肺炎や新生児結膜炎を起こして生まれることもあります。

性行為で移る病気なので、自分が罹ればパートナーも感染してしまう可能性があります。
そのため、クラミジアの治療は、パートナーも一緒にすることが望ましいです。
男性の場合は、尿道炎や睾丸炎になることもあり、男性不妊の原因にもなります。

卵管炎

卵管や卵巣は炎症の起きやすいところです。
炎症の原因のほとんどは、大腸菌やブドウ球菌、クラミジア、淋菌などの感染症です。
性交渉やタンポンの長期使用などで原因となる菌が膣に感染し、そして子宮頸管・子宮内膜へと炎症が広がっていくきます。

卵管炎の原因の多くは、クラミジアや淋菌感染です。
この症状は炎症が軽く、ほとんど症状が出ずに、卵管炎に進行してしまいます。
卵管に癒着が起きたり、詰まったりすることが多く、不妊や子宮外妊娠などにつながる恐れがあります。

ピックアップ障害

卵管の一番先にある卵管采は、排卵した卵子を卵管内に取り込む働きをしますが、ピックアップ障害は、卵管采が卵子を取り込むことができない症状です。
原因は、子宮内膜症や炎症によることが多く、骨盤腔内の手術後によるものや、癒着、クラミジアによる感染も考えられます。